シネマヴェーラ渋谷「成瀬になれなかった男 映像作家・千葉泰樹」
シネマヴェーラ渋谷「成瀬になれなかった男 映像作家・千葉泰樹」へ。 『二人の息子』『続大番 風雲篇』2本立て。
『二人の息子』 この日は『大番』目当てで行きましたので、この作品はあまり期待しなかった(スイマセン…)のですが、いやぁ良い映画でした。
父親が失職し、親の扶養と過去の恨みで反目しあう家族をシビアに描いたストーリー。
父親役の藤原釜足・母親役の望月優子・長男役の宝田明・次男役の加山雄三・妹役の藤山陽子。皆さんニンに合う好配役。 う~ん、親の扶養・実家と嫁・妹の結婚問題・失職・再就職の難しさ等々。 今でも。と、いうより未来永劫に続くテーマなんでしょうね。
自分の家庭を第一に考える長男。出来損ない(?)だけど家族を第一に考えている次男(この次男が騒動を引き起こし経済状況も更に逼迫する)。環境など含めて次第に変わっていってしまう妹。 生真面目だが不器用な父。間に挟まって実は一番気の毒なのかもしれない母。
そして、長男の嫁役の白川由美がまた凄い(?)キャラクターでした。見目麗しいのですが、実家に対して嫌な思いをしたので何があろうと協力をしたくないという役どころがピタリとハマります。 両親が金策に訪れてきた時にピシっと意見を言う所なんかも真に迫っておりました。セリフのトーンは全篇通じて「落ち着いた感じ」なのでより効果的なのかもしれませんね。
「玉子つながり」のシーンは特に印象に残りました。 家庭状況を見事なまでに描いているのではないかと。絵的には連続なワケですから。 楽しいはずの「すき焼き」も…。結局こうなっちゃうのね。
妹が最初の恋人に 「私、結婚はしないわ。だって、お父さんとお母さん幸せそうじゃないもん」 というセリフも印象に残る。この妹も最後は…。
父が代書屋に勤めた為にクビになっちゃったジイさんのその後が知りたいような気がします(笑)
色々考えさせられる映画でした。
『続大番 風雲篇』は『大番』シリーズの第2作です。 これ、観たかったんですよねぇ。「大番のギューちゃん」ホントは第1作から順に観たかったのですが、スケジュールの都合で2作目から。
これはとにかく加東大介演ずるギューちゃんが絶品。 顔や体型(笑)や喋り方や性格含めて正に「ギューちゃん」って感じですね。加東大介以外の役者さんで配役するのは不可能ではないかと。
で、それを支える(?)料亭の女将役・淡島千景も実に良いキャラクターでこれまたニンに合う配役。 ギューちゃんは憧れの人がいるから所帯は持てない・その上芸者なんぞといい仲になっちゃったりして。ちょっと可哀そうだけどカラッと明るいんですよねぇ。色気と愛嬌が何とも言えません。 江戸っ子って感じの性格とセリフ回し。あ、そう言えば「地べた掘ったって出て来ない」ってのを「じびた掘ったって」って言ってたような気がする。ワタシの聞き間違いかなぁ。
宇和島の人々。ワタシの大好きな多々良純・三木のり平・父親役の谷晃・母親役の沢村貞子等も実に良いキャラクターで楽しいエピソードになりますね。
恩人の河津清三郎は珍しく(?)好人物の役どころ。 観ながら「いい人のフリをしてて、最後は悪人になるんじゃないかな」なんて思っちゃいました。人を今までの役柄だけで判断するのは止めましょう(笑)
「チャップリンさん」なる不思議な人物を演ずる東野英治郎も愉快。 原節子のコスプレ(?)はちょっと笑えました。