新文芸坐「検証日本映画Vol. 16 成瀬巳喜男 静かなる、永遠の輝き」 『乱れる』『乱れ雲』


新文芸坐「検証日本映画Vol. 16 成瀬巳喜男 静かなる、永遠の輝き」へ。

『乱れる』『乱れ雲』2本立て。 乱れてます(笑)

『乱れる』 夫に先立たれ、親戚たちに体よく追い出される礼子(高峰秀子)に義弟の幸司(加山雄三)は思慕を告げるが…。と、いったストーリー。

高峰秀子が未亡人になりながらも昔ながらの酒屋を切り盛りする落ち着いた女主人がニンに合いますねぇ。 健気で優しくて一生懸命で。 あばずれ的な役どころからこういう落ち着き払った賢婦人みたいな役どころまでどんな役でもこなすんですね。芸域広いなぁとつくづく思う。

義理の弟役・加山雄三も最初はフラフラしてるアンちゃんなんですが、これも嫌味になりません。 天性の人柄なのかも。 で、後半は義姉の為に一生懸命になり、そして…。 結構一本気なのね。

スーパーに客を取られ、店を畳んでスーパーにしようと目論む義妹の草笛光子と白川由美も適度にあざとく、母親役の三益愛子もその板挟みになってる感じがとても良く出ておりました。 どっちにつけばいいのやら。てぇのかしら。

特に後半の揺れ動く高峰秀子の心情が手に取るように分かります。 追ってくる加山雄三がまたイイんですよねぇ。

清水から山形(結局銀山温泉)へ向かうんですが、その急行車内で最初は立ってて(デコちゃんは座ってますが)、やがて遠い席に着く。で、電車が走行してるシーンが映って少し近付く。また走行シーン→席が近付く。の繰り返しなんですが、この繋げ方もなるほどなぁと思いました。 席に座るたびに加山雄三がデコちゃんをチラッと見てニコッといたずらっぽい目をして笑うのも良かった。 こうやって2人の距離が接近していくワケなんだなぁ。心情も。 これはやはり昔の電車ならではなのかなぁと。長時間のなせる業。 新幹線ではモヤモヤしたまま着いちゃうから。

ラストは結構衝撃的。 こうなるのかぁ…。う~ん。やるせない。

『乱れ雲』

交通事故で夫を亡くした由美子(司葉子)は加害者である史郎(加山雄三)との愛で揺れ動く…。と、いったストーリー。

司葉子は美しい…。とにかく美しい…。 華奢な身体と麗しい顔が幸せの絶頂から突き落とされる未亡人にピタリとハマります。 最初は頑なに拒絶しているワケですが、途中から徐々にという揺れ動く心情。 表情がまた良いんですよねぇ。

加山雄三も特に中盤以降は能天気さというか、空気を読まなさ感というか、そんなところもウマく出ておりました。 「普通は遺族のところにそこまでズカズカ行かないだろ」とか心の中で何度もツッコミましたから。 観てて結構イライラしちゃいましてね。 そう思わせるだけの名演ではないかと。 で、爽やかだから余計にイライラしたりして(笑)

草笛光子は司葉子の姉役ですが、このワンクッションが凄く良かった。 案外軽い感じで。この役が重かったら救われないかも。 その夫役の藤木悠も愉快なので尚更。 子役も良かったなぁ。

司葉子の義姉森光子は軽いトーンでの受け答えの呼吸や芸達者な所も楽しめましたし、加東大介は俗物丸出し(?)なコメディーリリーフ的役割は一服の清涼剤(笑)。

途中バス車内で司葉子の隣に座ってるジイサン役・左卜全がチョイ役で二言しかセリフ言わないんですが、さらいますねぇ。 加山雄三に席変わってくれと言われて「嫌だ」ってボソッと言うだけなんですがねぇ。妙に可笑しい。左卜全の面目躍如(笑)

浦辺粂子も息子思いの母親役はさすがの名演です。

ストーリー的に、あの2人が普通は恋に落ちるかなぁなんてね、思いましたが。 でも、そうなることが(厳密に言うと「ならない」とも言えますが)この話ではポイントなんでしょうね。 辛い境遇にどんどん落ちて行く司葉子に優しく近付いて行く加山雄三という構図ですから。

とにかく役者さんはとても良かったです。

2作品ともに出ていたのは加山雄三・浦辺粂子・草笛光子・十朱久雄でした。 十朱久雄は重要な役どころではないのですが、やはりこういう役者さんが出ていると自然とストーリーに厚みが増しますね。

どちらの作品も救われないという感じでしょうか…。 やっぱり乱れてるワケだなぁ。

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