新文芸坐「検証日本映画Vol. 16 成瀬巳喜男 静かなる、永遠の輝き」 『腰弁頑張れ』 『秀子の車掌さん』 『乙女ごころ三人姉妹』


新文芸坐「検証日本映画Vol. 16 成瀬巳喜男 静かなる、永遠の輝き」へ。

『腰弁頑張れ』『秀子の車掌さん』『乙女ごころ三人姉妹』3本立て。

『腰弁頑張れ』 顧客獲得のため涙ぐましい奮闘を続ける保険外交員の悲哀。 現存する最も古い成瀬作品(昭和6年)だそうです。

この時代の映画ですから当然無声映画。 澤登翠さんが弁士をされておりました。

活弁は初めてでしたが、なかなか良いですねぇ。 セリフの途中で落語でいう所の「地のセリフ」がよく出て来ましたが、映像自体の尺が決まってますからそれにピタッと合わせるのって結構大変なんだろうなぁと思いました。 正に職人芸。

ストーリーはドタバタチックな上質なコメディでもあり、後半は少々しんみり。 悲喜劇といった感じでしょうか。

主役の山口勇と子どもとのやり取り(実子・加藤精一はモチロン顧客の子らとの)が愉快なんですよねぇ。 押入れに隠れるシーン。自分が馬になって跳び箱をさせるシーン(靴裏の穴を塞いである)。息子が顧客の子どもと喧嘩をしてハナは褒めてたけど、ボンだと分かっていきなり怒り出して謝りに行けと言い出すシーン等々。

後半の病室のシーンでは息子のことを思う親の愛情に満ち溢れておりました。

無声映画だからでしょうかねぇ。所々動きが少々オーバーなのかなぁと思えるところもありました。 言葉が伝えられなくて画像だけだとそういう演じ方になるのかもしれませんね。

尺も短いのでテンポ良く楽しめました。 喜怒哀楽ギュッと濃縮した感じです。

『秀子の車掌さん』 甲州の山間を走るおんぼろ乗り合いバス。ライバル会社から乗客を取り戻すため車掌のおこまさんは名所案内を思いつくが…。と、いったストーリー。 昭和16年の作品。

バスですから、清水宏の作品と少しかぶります??(笑)

主役のおこまさんはご存知高峰秀子。 全17作の成瀬作品に出演したヒロインとの出会いの1本だそうで。

いやぁ。デコちゃんがいい。とってもいい。 で、物凄く可愛らしいんですよねぇ。あんまり擦れて(?)ない感じだし(笑) 明朗な車掌さんがピタリとハマります。 初々しく笑顔もステキだなぁ。 初々しさもありながら、声音も少し低いし落ち着いているのでそれが妙に可笑しかったり(受け答えが)しました。 これも不思議な・独特なデコちゃんの魅力。

同僚のバス運転手・藤原鶏太もシラッと(嫌味じゃない)皮肉を言ったり、マジメな受け答えも実はものすごく面白かったり。 素の面白さなんですね。いやぁ、これはなかなか勉強になるなぁ。 顔や声を聞いて「これ、藤原釜足じゃないか」と思って調べたらその通りでした。この頃不敬とのことで改名してたのね。ふむふむ。 独特の味のある役者さんですよねぇ。

名所案内の文言を考えてもらう作家先生は夏川大二郎。 これまた良いキャラで。 説明のガイド口調や手付きが妙にウマく(昔のガイドさん風の独特の口調)ビックリ。

あと、社長役の勝見庸太郎も愉快でした。 藤原釜足との絡みなんかは思わず笑っちゃう。 説明の文章を書いてもらった紙を藤原釜足が持ってきて許可を貰う時に中身を全く見ないで「これでいいだろ」と言ったり。 その作家先生のことを聞いた時に「どうせ大したやつじゃないだろ」と言う所。それを受けた藤原釜足が「は、大したことはないようで」と答える。今思い出しても笑える。 あ、そうそう。いつでも氷とラムネね(笑)

下宿のオバちゃん役の清川玉枝も相変わらず良い味を醸し出しておりました。もう、この頃から清川玉枝そのもの(笑) あと、藤原釜足の年齢設定っていくつくらいなんだろうなぁ。 立派なオッサンの風でしたから。実はそれなりに若い設定なのかも(笑)

『乙女ごころ三人姉妹』 浅草を舞台にした3人姉妹。長女・細川ちか子は男と駆け落ち。次女・堤真佐子は門付け(いわゆる流し。三味線で流行歌を歌う)、三女・梅園竜子はレビューの踊り子。この3人をとりまく物語。 成瀬初のトーキー作品(昭和10年)だそうです。

この手の映画では浅草が舞台なので戦前。六区の賑わいや風景もチラッと観られるのがとても嬉しい。 映画や芝居小屋の看板とか。あ、寄席の看板(どこの寄席か分かりませんが)も一瞬出てました。で、名前がズラッと書いてありましたが、「三語楼」って名前もあったような気がしたんですよねぇ。はっきり見えなかったけど…。 「貞山」だけははっきり分かりました。 三語楼だったら嬉しいなぁ。

それから松屋も何度も出て来まして。 屋上にゴンドラみたいな遊具(乗り物)があったんですねぇ。 初見なんでちょっと感動。

主役は堤真佐子です。 流しだから悲哀にも満ちてますし、嫌な酔客も相手にするし、店から追っ払われたり。等々。 また、母親が親方なんですが、「角兵衛獅子の親方」チックなんですよねぇ。 この母親と稼ぎの悪い流しの少女たちとの板挟みになったりする優しさ。 あ、そうそう。酔客に絡まれて三味線の皮を破っちゃって(心の中で「あら」って言っちゃった)、家に帰って母親にそのことを詰られて「腕1本折れても三味線を守るんだよ」と言われたセリフが印象に残りました。

ラストは悲しい…。 こういう時代に比べると今は随分と明るいなぁなんて思いました。色々な意味で。

梅園龍子の顔や服装や帽子がとても可愛らしかったです。

やっぱり成瀬作品はイイなぁ。 この特集はしばらく続きますので色々観るのが楽しみです。

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